印象と違う 第1次トランプ政権とバイデン政権の財政出動
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バイデン政権における巨額の財政出動が2022年以降のインフレ要因として挙げられる事が多いのですが、これを正しいのかチェックしてみるとイメージと違う実態が見えてきます。

第1次トランプ政権とバイデン政権の債務増加比較

むしろ「任期中にどれだけ債務を増やす決定をしたか」という累積影響で見れば、パンデミック初期に超党派で巨額予算を組んだトランプ政権時の方が、総額としては大きくなるという分析が実際には一般的です。

1. 財政出動の「総額」の真実

連邦予算委員会(CRFB)の詳細な分析によれば、トランプ政権(第1次)の方がバイデン政権よりも多くの債務増加を承認しています。

トランプ政権(4年間): 約 8.4兆ドルの債務増加(10年間予測ベース)
約 8.4兆ドル 「赤字拡大措置の総額(グロス) 8.8兆ドル − 削減分0.4兆ドル)

バイデン政権(4年間): 約 4.7兆ドルの債務増加(同じ純額ベースで)
約 4.7兆ドル 「赤字拡大措置の総額(グロス)約6.6兆ドル − 財政健全化措置による削減分約1.9兆ドル(財政責任法による1.5兆ドル削減、IRAによる2520億ドル削減など」

コロナショック関連の支出だけで見ても、トランプの3.6兆ドル(CARES法)とバイデンの2.1兆ドル(アメリカンレスキュープラン)は約1.5兆ドルもの開きがあります。インフレ要因は実際にはトランプの財政出動であったのではと考えたくなるかもしれません。

ですが、そう結論付けるには少し要素が足りません。

2. 「インフレ加速」のメカニズムに関する誤解

トランプとバイデンのコロナ関連の支出は額が違うと共に、状況と支出の質(直接性)が異なります。

一つ忘れてはならないのは、今私たちはコロナショックが収束して何年も経った時代に居て、当時起こった出来事、その後の流れを知っているという事です。

2021年当時、コロナが本当に終息するのはいつ頃なのだろうと判断可能な状況ではなかった事も忘れてはなりません。バイデンのアメリカンレスキュープラン署名から2ヶ月後の2021年5月、日本では自衛隊まで動員したワクチン大規模接種センターが運営開始されていました。

3. 実際にアメリカでインフレが生まれた流れを把握するために

「トランプのCARES法などでの支出がインフレ要因の一部となり、バイデンの アメリカンレスキュープラン での直接給付がインフレ加速のトリガーになった。」しかしそれでも正しい理解へと到達するには少し足りません。

バイデンのアメリカンレスキュープランと同時期に起こった下記の出来事もアメリカのインフレを語る上で外せません。

  1. サプライチェーン寸断(半導体・海運)
  2. FRBのゼロ金利・QE継続という金融緩和との合わせ技
  3. パンデミックによるモノ需要へのシフト
  4. エネルギー・食糧などの価格急騰(影響特に大、ウクライナ侵攻は2022年2月)

特に3について、FRBが2021年を通じてインフレを「一時的(transitory)」と見誤り、利上げを遅らせたことも加速要因として見逃せません。パウエルFRBは2021年11月に一時的という認識を撤回、2022年の大幅利上げの連続へと舵を切ります。

これらを踏まえると、2020年末のトランプによる追加給付あたりから過剰な財政出動が生まれ、2021年のバイデン政権のアメリカンレスキュープランとFRBの見誤り、その後のウクライナ侵攻でエネルギー・食料が価格急騰などが重なった事が、アメリカのインフレ加速の流れと言えます。

こうした流れを把握しておくと、例えば米国株・米国債に関心のある方がインフレ率や国債価格・金利等の変化を知ろうとする時、その理由や背景をより明確に理解出来る様になります。

本記事のまとめ

基本的に政治経済においては、このアクションがこの結果を起こしたと単純に説明できるものはごく少数です。原因となる出来事があり、その後起こる決定や事件などが原因を問題へと成長させ続け、ある時点において臨界点を超えるという流れが大半です。

この視点を持っておくと、今行われている政治的決定や議論などが、原因を生むものか過去生まれた問題を大きくしてしまう間違いではないかなど、ある種のドラマを見ている感覚で内容を掴んだり、その後を予測する事が可能になる機会が増えます。